イギリスの日本語教師アシスタントの注意点

イギリス コラム 日本語教育

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イギリスにて日本語教師アシスタントとして活動する際には以下のような注意点に留意する必要があります。

需要の低さ

イギリスの日本語教師・日本語授業の需要の低さについて予め十分に認知しておくこと。

「日本語教師アシスタント・プログラム」というと、日本語教育が比較的盛んなオーストラリアでの活動写真などがイメージとして定着していますが(イギリスの日本語教師アシスタントやインターンと称して、オーストラリアの日本語教師アシスタントの活動写真を掲載している業者もいます)、イギリスにおいてはそれとは異なります。

イギリスに行ったら、日本語に関心を持っている子どもたちが多くて、そんなフレンドリーな子どもたちに囲まれて、楽しく日本語教育活動を日々おこなっていく・・・という、オーストラリアでの活動のようなイメージをイギリスに持ってしまうと、そのギャップに苦しむことになります。

そのような背景から、イギリス到着後、イメージとのギャップでトラブルに見舞われることも多々あります。日本語教育「未開の地」で、日本語や日本文化を紹介する機会を自分で開拓していくなどの意識が求められます。

イギリスのビザ事情など

英国ビザ事情や入国審査時の注意事項について、十分に理解すること。

適正なビザがない

イギリスには、多くの日本語教師アシスタントが活動するオーストラリアやニュージーランド、カナダのような日本語教師アシスタント専用のビザ、または日本語教師アシスタントに完全に合致したビザがありません。

有給の就労ではない点、あくまでボランティアである点などにも留意する必要があります。また、これに関連して、当初予定の活動期間を延長することは不可であり、これを無視して学校へ直接交渉した場合は、違反行為となります。

持ち物も注意

英国入国時の持ち物も注意です。持ち物の中に、イギリスで働こう(就職しよう)と臭わせるモノ(例えば履歴書のようなもの)が入っているとアウトです。税関の別室に連れていかれ、いろいろ取り調べられた挙句、入国拒否となり、その場で日本へ送り返されてしまいます。

パスポートに、例えば、過去の他国でのワーキングホリデー・ビザの査証(シール)などが貼られている場合も、「この人はイギリスにも働きに来たのではないか?」という目で見られますので、入国審査では疑いの目を持って、いろいろ細かく尋ねられますので心の準備が必要です。

マナー

派遣校到着以前に、学校担当者と事前にコンタクトを取り合い、社会人としての良識である挨拶はきちんとし、現地到着後の研修生活に必要な情報を収集することに努めること。

当たり前ですが、あくまで「1教員として」活動することになるので、礼節をわきまえた行動が、イギリス渡航前から求められます。

「留学生」(お客様)ではなく、「現地学校スタッフの一員となる」という認識を強く持つことが重要です。

与えられることを待つ受け身の姿勢ですと、活動する機会は与えられないどころか、学校での滞在を中止していただく事態にもつながりかねません。

英国ならではの諸事情

現地(イギリス)到着してからのすべての交通費は、参加者の自己負担であること、また、日本語教師アシスタントが活動する他国と比較した場合、イギリスは物価が高く、本来は生活費が非常にかかることを予め認知していること。

そうしたイギリスの物価高のため、本来であれば宿泊費等が非常にかかるところ、経済的配慮からイギリス伝統の寮制学校を利用することで、滞在費(宿泊費・食費)が大幅に緩和されているという事実を理解した上で、寮のDuty(お手伝いなど)が活動内容に含まれることが通例であり、積極的に寮での補助業務に協力することや積極的に寮制教育を学ぶことも重要になります。

また、学内での役職名等については、受け入れ校側に委ね、それに従っていただくようになります。

その他の活動

日本語の授業や日本文化紹介以外にも、学校業務や行事全般に積極的に参加し、補助を行うことも、日本語教師アシスタントとしての活動内容に含まれることを強く認知していただく必要があります。

私は日本語教育・日本文化紹介だけをやりたい、寮や学校の雑務には関わりたくない、という姿勢ですと、居場所を失っていくことになります。

異文化理解

これは海外生活では当たり前のことですが、日本とイギリスにも文化差があり、現地(イギリス)到着後は、今まで日本での日常生活の中であたりまえだと思っていた物事への対処の仕方(常識)が通用しないことを予め理解し、周囲環境を学び適応するように努めることがとても重要です。

以下の『異文化適応・カルチャーショック』の異文化適応曲線(U字曲線、W字曲線)なども事前に理解していただく必要があります。

異文化適応・カルチャーショック

異文化に適応していくプロセスとして、一般的にいくつかの段階を経験する人が多いようです。その中のプロセスとして、カルチャー・ショック(母国のものとはかけ離れているかもしれない、新しい環境や文化に慣れ親しむ際に起こる心理的ショックのこと)を経験する人もいるようです。

異文化で生活を始めると、今まで日本での日常生活の中で当たり前だと思っていた物事への対処の仕方が通用しません。天候・食事・地理・人々とその地域での生活の仕方などが真新しい世界かもしれませんし、皆さんの英語が思った通りにうまく通じないかもしれません。

カルチャーショックを受けてからその文化に適応していく過程については、さまざまな研究がなされ、モデル化も行われています。

リスガード(Lysgaard,S 1955)が提起したモデル(下図)は、アルファ ベットのUの字に似ていることからU字曲線と呼ばれています。


一方、ガラホーン・ガラホーン(Gullahorn,J.T.,&Gullahorn) は、異文化での適応過程と帰国後の自文化での再適応過程のそれぞれのU字曲線2つを合わせ、その全体の適応過程をW字としモデル化しました。これはW字曲線と呼ばれています。

リスガードのモデルによると、異文化での適応過程は異文化に入った直後の「初期ショック」、異文化での生活に対し気分が高揚し懸命に適応しようとする「ハネムーン期」、次第に生活が落ちつき周囲が見えるようになるにつれ不満とストレスが募り落ち込みが見られる「移行期ショック」を経て、「回復と安定の時期」へ至るとされています。

このモデルについてはその後研究の方法論上の問題が指摘され、十分検証が行われているとは言い難いですが、一般的には広く認知されています。

英語力

英会話力の重要性を認知いただくこと。

特にイギリスの日本語教師アシスタントは、自分で機会を開拓し、自主的に動く必要がありますので、高い英語力が求められます。英語力についてはこちらイギリスの日本語教師アシスタントの特徴にて詳しく書いてあります。

現地で活動中、「英語力がない」と学校側から判断された場合、日本語教師アシスタント活動は中止(休止)となり、生徒と一緒に英語の授業を受けさせられたりする場合もあります。

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