海外で日本人ボランティアを受け入れる意義は?

幼稚園ボランティア

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多文化異文化交流

日本語教師アシスタントは、主に海外の小中高校に相当する教育機関で活動しますが、中には小中学校に幼稚園が併設されている一貫校もあり、幼稚園でも活動することがあります。

また、それとは別に、最初から現地の幼稚園・保育園・チャイルドケアセンターなどに絞って活動することを目的とした幼稚園ボランティアもあります。

オーストラリアやニュージーランドの現地の幼稚園や保育園は、海外からのボランティア・スタッフの受け入れに積極的だとよく話を聞きますが、外国人や日本人のボランティアを幼稚園などの教育現場に受け入れる意義やメリットはどのようなものでしょうか。

ボランティア受入側は大変

正直、見ず知らずの人を教育の現場に新しくスタッフとして受け入れるのは大変です。ある程度、一人前のスタッフとして働けるようになるには、最低でも3ヶ月程度はかかるので、ボランティアといえど、スタッフが一人増えることは、園児が一人増えるのと同等かそれ以上、受入園にとって大変な場合もあります。

にもかかわらず、オーストラリアやニュージーランドの現地の幼稚園や保育園は、ドイツなどの欧州や、日本などから積極的にボランティアスタッフを受け入れています。

外国人のボランティアを受け入れる背景

現地の幼稚園には、日系の幼稚園などもありますが、日系の幼稚園にも日本人の子どもだけでなく、オーストラリア人、ニュージーランド人など他の民族の子どもたちが入園してくることがあります。

日系幼稚園に入園する子どもたちは、保護者に日本語を習得することを主に期待されていますが、その他に、日本人的特性をも認知し、日本文化にも精通し、その特性にも慣れ親しんでいきます。

オーストラリア人やニュージーランド人の保護者にとっては、通常、日本人の保護者よりも、日本文化や日本語を習得してほしいとの要望は強くありませんが、しかし、GDP世界第2位~3位と、経済的に強い日本との関わり、未来での職業面における何らかの効用を言語習得によって実現できるのではないか、という可能性を望んでいる保護者も少なからずいらっしゃいます。

保護者の家庭における関わり方次第で、子どもの異文化に対する受け止め方は大きく異なると言われていますが、例え保護者が文化面においての関心を日本に示していないとしても、子どもは異なった文化であっても子ども特有の柔軟性と可塑性(かそせい)によって、あらゆるものをたやすく受容し、内在化していきます。

そして、その後の教育を含む生活環境などの影響によって、それらを分別していく作業を繰り返し、自己概念形成に至っていくのです。

つまり、幼児期に出会った異文化としての日本が、各自の意識の中に少なからず影響し、将来的に多文化を一方的に排除する偏った幼稚なナショナリストにならない一要因を、外国人スタッフ受け入れに積極的な幼稚園などの初等教育機関の教育環境で学びえることになります。

様々な言語は諸国家の遺産

辞書編集者のサミュエル・ジョンソンは、1773年にスコットランド北部を旅した時、「一つの言語でも失われるということは悲しいことだ。なぜなら、様々な言語は諸国家の遺産であるから」と述べ、ジョンソンは、一つの国家に多くの言語が存在すればするほど、その国家は文化的に豊かであるという考えを表明しています。(「日本のバイリンガリズム」by ジョン・C・マーハ)

オーストラリアの子どもたちは、日本在住の子どもと異なり、通常、多民族多文化国家に生きて、ジョンソンが説く、多言語のの好影響を受けていくことになります。 現地幼稚園のオーストラリア人の子どもにとっては、幼稚園ボランティア・スタッフを通して、初めての異文化としての日本文化に触れ、世界人としての意識観、感性を身に付ける第一歩を踏むことになるのです。

逆に、幼稚園ボランティアに参加される人にとっても、人種としてマイナーな存在である立場を経験することによって、逆に、日本という国を外から見た場合の「感覚」を体得することができます。

その経験は、将来、日本や、世界において教育に携わる仕事に就く場合や、自身の子育てする場合においても、きっと役に立つことでしょう。

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